大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(う)1300号 判決

所論は,原判決が,被告人は「ノーパントップレス喫茶キャツツアイ」(以下「キャツツアイ」という。)を経営していた者であり,同店の営業責任者であった原審相被告人鎌田直(以下「鎌田」という。)及び店長をしていた同佐々木誠悟(以下「佐々木」という。)の両名と共謀して,児童の心身に有害な影響を与えるわいせつな行為をさせる目的をもって,満18歳に満たない児童であるミホことM女(以下「M」という。)及びチハルことT女(以下「T」という。)の両名を自己の支配下に置いた旨認定し,児童福祉法34条1項9号,60条2項,3項本文,刑法60条を各適用処罰したことに対して,これを不当とし,そもそも,被告人は,右児童らを「自己の支配下に置いた者」でないとともに,児童福祉法60条3項本文適用の対象となる児童を「使用する者」でもなく,また,同法34条1項違反の罪について共同正犯が成立するためには,共犯者間に被用者が児童であることの認識を要するものと解すべきところ,被告人は右認識を有しなかったのであるから,被告人に本件犯行の共謀を認める余地はない,というのである。

そこで,原審の記録に基いて検討するのに,原判決挙示の証拠を総合すれば,(中略)被告人は鎌田や佐々木と意思を通じてノーパン嬢であった児童のM及びTをそれぞれ自己の支配下に配いた者であると認めるに十分である。

ところで,児童福祉法34条1項9号は何人に対しても同号所定の除外事由がある場合を除き,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもってこれを自己の支配下に置く行為をすることを禁止し,これに違反した者に対する罰則規定として同法60条2項を定め,さらに右違反者のうち,児童を使用する者に関し,同条3項は,「児童を使用する者は,児童の年齢を知らないことを理由として,前2項の規定による処罰を免れることができない。但し,過失のないときはこの限りでない。」と定めており,これらの諸規定を総合検討すると,原判決の説示のとおり,同法60条3項は,同条1項及び2項により処罰される同法34条1項各号の禁止規定に違反した罪については,児童を使用する者の場合,児童の年齢に対する認識の有無を主観的構成要件としないことを明らかにするとともに,その年齢を知らないことにつき過失のないときは処罰を免れるということを定めたものであり,同法60条1項及び2項に対する一種の解釈的な補充規定であって,特に過失犯の類型を規定したものではないと解すべきである(東京高裁判決昭和41年7月19日高刑集19巻4号481頁参照)。そして,本件の場合,被告人自らは本件児童2名の年齢についての認識があったと認めるに足りない場合であり,他方前説示のとおり被告人は右児童らを使用していた者である以上,児童の年齢を知らなかったことについて被告人の無過失が立証されなければ,被告人は児童福祉法60条3項の規定によりその刑責を免れないものといわなければならず,同条4項によってはじめて処罰が可能となる事業主に該らないことも勿論である。しかも,本件につき,被告人がMらが児童であることを知らなかったことについて無過失であったとは認められないのである。そして本件の罪について共同正犯が成立するためには,共犯者間において児童の年齢についてまで認識を共通にする必要はなく,児童を使用する者が,法定の除外理由がないのに,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって,これを自己の支配下に置く行為をするという客観的な事実について,これを他の者と共謀し,実行すれば足りるものと解するのが相当であり,かつ証拠によれば,被告人は鎌田や佐々木と意を通じて法定の除外事由がないのに,児童の心身に有害な影響を与える原判示のようなわいせつ行為をさせる目的をもって児童であるM及びTを自己の支配下に置く行為をしたことが認められるのであるから,原判決が被告人に対し,児童福祉法34条1項9号,60条2項,3項本文,刑法60条をそれぞれ適用し,被告人を本件犯行の共同正犯として処罰したのは正当というべきである。

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